人工内耳友の会関西の歴史

※以下は、令和2年(2020年)9月5日に、京都聴覚言語障害者福祉協会とオンラインで当会と繋ぎ実施された「コミュニケーション教室」における、当会会長の西尾忠重氏の講演より。

 

『人工内耳友の会関西』のご紹介

 

「人工内耳友の会関西」の会長を担当している西尾です。

 講演させていただく機会を与えていただき、ありがとうございます。限られた時間内にスピーチさせていただくため、次の3点にしぼって話をさせて下さい。

 

①人工内耳友の会関西の歴史

②どんな出版物を発行しているか

③現在の会の活動

 

人工内耳友の会関西の歴史

 30年位前の平成4年、大阪大学の病院の先生方、人工内耳の手術を受けた人達の集まりとしてスタートし、会の名前も何度か変わり、『人工内耳友の会関西』に至っております。

 初めのころは、阪大病院の先生方の全面的な協力もあり、病院内に事務局を置くスペースを確保して下さる等、会の運営に尽くして下さいました。すでに故人となった阪大病院の久保武先生をはじめ、当時の病院関係者の方々には、ただ感謝あるのみです。

 

 


【スライド1】の写真は、久保武先生です。

 久保武先生については、人工内耳手術を担当されている他に、人工内耳手術を受けた人達の集まりにも参加され、リハビリにもアドバイスを与えたりされました。

 

【スライド2】は、会誌「ふれあい9号」の表紙です。

 「ふれあい」という題字は、久保先生に書いていただきました。題字の意味するところは、「普段着で思うままに、輪を広げていこう。そして、息抜きの場にしよう」との事です。

 20年位前のふれあいに、久保先生の講演の記事があり、先生の人工内耳にかける熱意をお伝えしたく、その一部を紹介させて下さい。専門用語も入って、少しわかりにくいですが、お許しください。次のような内容です。

 「日本で単チャンネルの人工内耳は、1980年に始まり、・・・・・91年医療機器として認められ、・・・・・今後は全て皮膚の中に埋め込んだものが開発されていくと思います。直接脳に埋め込む機械も出てきます。

 補聴器と人工内耳の狭間にあって、どちらもうまく使えない人には、人工中耳が出てきます。もっと将来には、遺伝子で耳の神経を再生する方法も出てくると思います。

 皆様には、今後も医学の進歩に期待していただきたい。とりあえずは、リハビリに励んでください。」

 以上です。

 さらに、もう一か所、人工内耳の手術を受けた方がリハビリを受けたり、会員同士集まって交流しあうのに力を尽くされたことを、巻頭言に寄せられており、病院内の手術ばかりでなく、その後のリハビリまでどう進めたらよいか、考えを書いておられる個所があり、その一部を紹介させてください。次のような内容です。

 「・・・・・高度難聴児への人工内耳を考えると、大人のように聞き取り能力を伸ばすだけでは不十分で、国語の力、言語能力といった、もっと大きな問題を考える必要があります。

 すべての面で成長期にありますので、精神・社会性の発達にも目を向けてリハビリテーションを行う必要があります。小児の人工内耳医療では、医師よりも、言語聴覚士(ST)の役割がますます重要になってきます。・・・・・他の施設で手術を受けた方でも受け入れが出来るような、独立採算制のリハビリセンター構想を実現させようとしています。」

 以上のような内容です。友の会の発展に尽くされた、先駆けとしての久保先生がしのばれます。

②どんな出版物を発行しているか

 次に、②に移ります。友の会関西が活動を始めて間もなく、情報を提供するため、ページ数が20ないし30にわたる冊子「ふれあい」を、年2回発行していました。書かれている内容は、人工内耳の手術を受けた人の体験談、友の会関西の交流の場としての、イベントの案内が主なものです。

 昨年、発行部数が「50回目」をもって発行を中断し、休刊ということになりました。

 

【スライド3】は、「ふれあい50号」の表紙と、「平成最後のお花見会」の写真です。

 大阪城西の丸庭園にて行いました。当日は寒かったですが、ビニールシートを広げ、弁当を食べながら話をしました。久しぶりに会う会員と話しあったりして、このイベントは長く続けたいと思いました。

 「ふれあい」が休刊に至ったのは、編集を担当される方の高齢化、時代の流れでインターネットが普及し、会員からの体験談、その他の原稿が少なくなった等があります。

 

 今後どのように情報発信していくかについてですが、規模を縮小して、見開き版のような形でやっていこうではないか、ということになりました。今年に入って、「関西だより」という題目で、表・裏の見開き版が出来上がりました。

【スライド4】は、「関西だより第1号」の表紙と、「令和最初の秋の交流会」の写真です。

 兵庫県丹波篠山市のユニトピア篠山にて行いました。実際に畑に入って、黒豆狩りを行い、慣れない手で枝を切り取ったり、楽しい思い出でした。

 本日、会場に来られた方に、「関西だより第1号」をお渡しします。参考にしていただければと思います。

 

現在の会の活動

 最後の③現在の会の活動についてふれます。

 現在、会の運営にかかわっている運営委員は5名で、作業を分担し合いながら進めております。

 春の「お花見会」、「定期総会」、秋の「交流会」、冬の「新年会」、その他を実施しています。

 

 

【スライド5】は、『ドーンセンター』の建物です。

 京阪天満橋駅の近くにあり、『友の会関西』の活動拠点としています。ドーンセンターは、「男女共同参画の推進と青少年の健全育成」を目的とする施設です。

 友の会関西の前の会長が、このドーンセンターヘ登録するにあたって、使用目的を書いた書類を紹介させて下さい。次のように書かれています。

 「聴覚障害者が健聴者と意思疎通を図るには、相当な勇気と努力が必要です。『障害者差別解消法』が平成28年4月に施行されましたが、簡単に差別が無くなるものではありません。

 聴覚障害児童にしても、差別やいじめが大人になっても残ります。差別を無くし、男女共同参画社会になじむために、聞く話す事が、健聴者に少しでも近づけるように、病院、医師、言語聴覚士、機器メーカーからの情報を含め、お互いが情報交換し、生活向上目指している団体です。」

 以上のような内容です。

 人工内耳は手術後のリハビリが大切ということで、手術を受けた人達が茶話会を開いて、励ましあっています。

 会についての問い合わせ、入会手続きについては、先ほど配った用紙に、事務局のFAX番号があるので、問い合わせていただければと思います。以上、『友の会関西』について紹介させていただきました。

 最後になりましたが、私は人工内耳を装用して、2年半余りがたちます。人工内耳をどのように受け止めているか、お話しさせて下さい。

 現在も病院には、年2回通い、担当の言語聴覚士の指導のもと、装置の点検、リハビリの今後の進め方等、指導を受けております。

 生活音、環境音は聞き取りとしてはまずまずですが、人との会話での言葉の聞き取りは、相手にもよりますが、まだ本人の努力が必要といったところです。右耳は補聴器、左耳は人工内耳で毎日を過ごしています。

 iPadでNHKのラジオ放送を聴いていると、補聴器では言葉の聞き取りは悪いですが、人工内耳では、ミニマイクを使って聞くと、例えば、天気予報では、アナウンサーの声は、7~8割ほどよく聞こえ、「人工内耳を装用して良かったな」と思っています。メーカーによる、人工内耳の性能の向上も期待し、希望を持ちたいと思います。

 以上で終わります。ご清聴ありがとうございました。

 

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 【参考ページ】久保武先生の遺稿

【補足】

 会報は『ふれあい No.51』として令和4年の秋に復刊致しました。